先日、神奈川県の大手塾臨海セミナーに同業の19社が抗議の申入書を送付したことが大きく報じられました。抗議の内容は、悪質な生徒の勧誘と合格実績の水増しとのことです。この類のトラブルは塾業界にはつきもので、臨海セミナーの噂については以前からありました。また、関東・関西には他にも同様の虚偽の合格実績と疑われる塾がいくつかありますが、大半の塾は正直にまじめに合格実績を公表しています。(ちなみに臨海セミナーは業界トップクラスの大手塾で神奈川県3強の一つです。教務内容や社員の質においても優良塾とされています。ただの中身のない悪質塾ではないだけに残念です。)
ごく一部の塾とはいえ虚偽の合格実績を発表してまで生徒募集をするのは、中学受験と高校受験の集団指導塾では、合格実績が生徒募集において非常に重要だからです。(大学受験塾と個別指導塾は実績では選ばれることが非常に少ない。)特に、高校受験では集団指導塾のシェアが減少するなか公立トップ校の合格実績が地域NO.1でないと生き残れないという事情もあります。
当塾にも集団指導の進学塾より転塾されたいとのお問い合わせをたくさんいただいています。保護者の方とお話する中で、皆さん塾の発表する合格実績をかなり信じていることに驚きました。私は半分わかってはいながら・・・というのが保護者の大半と思っていましたので少々驚きました。ただ、合格実績で塾を選んでしまう保護者の心理はよくわかります。自分の子も公立トップ校に行けそうな気になりますし、その塾に通っていることにステータスを感じているのかもしれません。しかしながら、合格実績がNO.1の塾であっても、実際に公立トップ校に合格できるのはごく一部です。また、授業内容も上位の生徒に合わせるのが普通です。宿題もたくさん出されますから、家で勉強しているように見えるので保護者は満足です。私が新卒で就職した某老舗進学塾は、塾長が「生徒には2種類ある、実績をだして塾に貢献すする生徒、授業料を納めてくれればそれでよい生徒。」と言うのを聞いた私は若かったこともあり、大変ショックをうけたことを覚えています。
このような話をすると「でも大手進学塾には公立高校合格のノウハウがあるでしょ。」とおっしゃる保護者もおられます。しかし、公立高校の入試は教科書の範囲からの出題で、難問・奇問は非常に少ない基本問題中心の主題です。しかも全国どこも同じような問題ですから、これほど対策のたてやすい入試はありません。神戸高校であろうと長田高校であろうと、もちろん市立西宮高校であろうとノウハウもなにも当然塾講師であれば誰にでもできる指導です。(ただし、神戸高校総合理学科や市立西宮のグローバルなど難関の専門学科はノウハウが必要です。)
ですから、合格実績で塾を選ぶのあまり意味のないことですし、集団指導の公立トップ校を狙う塾に通って効果があるのは『学力が高く、意欲もあり、勉強の習慣や方法が身についている生徒』になります。
私は塾業界28年の経験でわかったことは、本当に対応がよく指導熱心で成績も良く上がる優良塾の90%以上は個人塾であること、また一方でどうしようもない悪質塾も個人塾に多いということです。そう考えると、一般の方の塾選びが難しいのは当然かもしれません。
※中学受験塾は合格実績で選ぶのもいいと思います。学校ごとに対策が必要で、これにはかなり細かいノウハウが必要です。