よく「書かないとおぼえられない」という生徒がいます。また、暗記は「書きながら」「声に出しながら」が効果的であると、なかば常識であるかのように思われています。実際に、書きながらおぼえると効果的ということは、科学的根拠もあります。しかしながら、私はこの説に大いに疑問を持っています。長く生徒指導してきたなかで、どう考えても優秀な生徒で書いておぼえている生徒は少ないと思っているからです。私自身も、受験生の時も今も書いて覚えたことはありません。
これまで私は、生徒や保護者様から「どうやったらおぼえられますか?」との質問を受けたときに、「おぼえ方は人それぞれですが、書いて、声にだして、歩きまわりながら、寝る直前に・・・ご自分に合った方法を見つけて下さい。」とお答えしてきました。間違ってはいないのですが・・・
先日、公立中位高の生徒を関関同立に合格させることで有名な塾の塾長先生とお話する機会がございました。その塾長先生も、書いておぼえることは、書くだけ時間と労力の無駄と感じられているそうです。そこで、ご自分の塾で実験されたそうで、具体的には、書いて覚える生徒と、見るだけ、あるいは声にだして書かないでおぼえる生徒のグループにわけ、単語テストの平均点を1年間比較したそうです。結果は圧倒的に書いておぼえる生徒の成績が悪かったそうです。私は、優秀な生徒は書かなくてもおぼえられる可能性があることは指摘しましたが、その塾にはそもそも偏差値30台の生徒を関関同立やMARCHにをコンセプトにしていますから、優秀な生徒はほとんど在籍していないとのことです。
つまり、「書かないとおぼえられない」という生徒は、書いていることに勉強している満足感があるようです。書くことに注意をとられ、実際には頭にあまり入っていないのかもしれません。書かないとおぼえられないのではなく、書いてもおぼえられていないが、書いた方が勉強した気になるということでしょう。本気で暗記する気持ちがあれば、書くことに注意を向けることは不可能で、テキストを凝視して声にだして覚えるということになるのかと思います。
もちろん、私のこの意見が正しいかどうかはわかりません。むしろ異論の方が多いでしょう。ただ、
・優秀な生徒で書いておぼえている生徒は少ない(過去に一人だけ神戸大に現役合格した生徒は書きまくっていました)
・書いておぼえようとしている生徒のほとんどは満足する成績はとれていない
この2つだけは事実であると思います。