今春、全国の女子大で初めての工学部が奈良女子大学に誕生しました。女子大で工学部、本当に学生が集まるのかと大学も心配していたようですが、予想されていたよりもレベルも高かったようです。もちろん、国立の名門大学だからということもありますが、女子学生がエンジニアを目指すことも普通になってきたのかもしれません。
また、名古屋工業大学が長く女子学生推薦入試を実施しています。女子学生対象の推薦入試ということで、導入当初は批判が殺到することも考えたとようですが、現在もこの推薦入試は続いています。また、兵庫県立大学の工学部でも10年ほど前より女子を対象にした推薦入試を実施しています。早慶上理の一角である東京理科大も先日女子学生を対象にした推薦入試の実施を発表しました。今後、全国の大学の工学部で女子学生を対象にした入試が拡大されることが予想されます。
つまり、女性のエンジニアは時代の要請ということです。企業も大学も女性のエンジニアが欲しくて仕方ないようです。これまで、工学部における女子の占有率は数%でした。ただ、ものづくりに興味のある女子は一定数いますし、数学や理科に適性のある女子学生も多くいました。女性がエンジニアに向いていないなどということは一切ないにも関わらず、なぜか女子は文学部・外国語学部や薬学や看護など医療系といった進路が選択されてきました。
工学系の学部は就職に非常に強くお勧めです。文系であれば、国立や関関同立以上のレベルの大学でなければ、就職活動の際に一流企業を受けようとしても苦戦はまぬがれないでしょう。ところが、工学部の学生は関関同立はもちろん、その下の産近甲龍の学生でも引っ張りだこです。さらにその下の大阪工業大学レベルでも多くは大企業に就職します。つまり、日本においては中堅エンジニアは慢性的に不足している状況です。(ただし、学科のより差があります。電気・電子・機械・情報などが特に強いようです。)
これほど就職に有利な工学部に、男子よりも有利な入試で入学できるわけですから女子が工学部を目指すのは得策だと思います。先ほど挙げた兵庫県立大学の女子学生を対象にした入試は、一般入試と比べると圧倒的に入りやすい状況が続いています。
では、ではなぜ工学部を目指さないのか。男子にも共通する理由にはなりますが、高校の数学が難しすぎるからだと思います。高1の秋には文系と理系を決める必要がありますが、日本の教育課程では高校になって数学が格段に難しくなります。中学時代は少し勉強すれば80点は取れた生徒でも、高校で勉強しなければ簡単に一桁の点数を取ってしまいます。その結果が、日本のほとんどの高校生が数学を必要としない私立文系になってしまうのです。これを読まれている方で、数Ⅰや数Aくらいどってことないだろうと思われる方も多いかもしれません。しかしながら、日本の高校数学は世界的に見れば、超ハイレベルです。たとえば、世界の工学系の大学の最高峰(だと思われている)マサチューセッツ工科大の学生の大学入学時点の数学の理解度は、日本の中堅大学レベルとのことです。(もちろん大学入学後の勉強量の圧倒的な違いで、一瞬のうちに日本の大多数の学生が抜いていかれますが。)しかも、数学Ⅲについては、理系の一部の学部で中堅以上の大学でのみ必要ですが、理解できる高校生がほとんどいない超難解な科目です。
しかしながら、高校の数学ができるかどうかは能力より適性です。学力はそれほどでなくても、高校数学が大丈夫な生徒は理系に進めばいいですし、学力が高く数学の成績はよくても文系教科に比べ適性がなければ文系に進むのがいいでしょう。私の指導経験では、全体の30%は理系に適性があるように思います。ですから、興味があって適性があれば女子生徒にもぜひエンジニアを目指してほしいと思います。