以前、ある保護者がお子様の実力テストが良かったとお喜びで「あの子はサボりで勉強していないと思ってたけど、コツコツ勉強してたんですね。これまで叱ってばかりだったことを謝りました。」とのことでした。私は何とも言えませんでしたが、私の考えとしては真逆です。中間・期末テストに比べて実力テストの成績が良い子は、これまで9000人以上の指導経験から相対的にはサボりがちな生徒が多いように思います。
というのは、中間・期末テストは範囲が決まっています。原則的には複数単元にまたがる問題はありませんし、国語や英語など出題される文章までわかっています。新たに学習した単元が中心なので、単純な知識を問う問題も多い。つまり、努力によって結果を出しやすいテストになります。一方、実力テストは複数の単元にまたがる総合問題も多いですし、英語や国語は出題される文章はもちろんわかりませんし、初見の文章であることが普通です。
つまり、実力テストが強い生徒は、普段はまじめに勉強していないので、中間・期末テストは相対的に弱い。しかしながら、能力の高い生徒はこういうタイプの生徒に多いという傾向もあるようです。一方、中間・期末テストが強い生徒は、まじめに日頃から勉強しているので、範囲が決まっており、また単純に知識を問う問題が多いと強いということが言えそうです。よく、学校の先生が言われる、普段からコツコツ勉強している生徒が実力テストに強いというのは、完全にきれいごとです。
私がこれまで指導した生徒で、最も努力していた生徒は中間・期末テストは中学高校(私立の中高一貫校に在籍されていました)とずっとトップクラスの成績で、高3で学習成績の状況(旧評定平均)が受験に必要だということで学校に開示してもらった際には、学年で1位でした。しかしながら模擬試験になると偏差値は40を少し上回る程度でした。この生徒は一般入試でどこも合格できないということで、指定校推薦で同志社大学に進学しました。かといってこの生徒さんが大学入学後に学力面で苦労したということはなく、大学院の後期課程まで進まれました。
つまり、学力は多面的で実力テストも中間・期末テストも学力の一面を計測しているに過ぎないということです。入試問題でさえも学力のある一面を測ることしかできません。そうであれば、生徒の皆さんは自分にあった土俵で戦えばいいということになります。
たとえば、中間・期末テストが強いタイプであれば高校選びの際に、大学の指定校推薦枠の多い高校や、私立高校の場合は指定校推薦が使えるコースを選ぶという方法があります。また、学習成績の状況(評定平均)が良ければ、公募推薦や総合型選抜で大学入試を有利に戦えます。特に、高校の中間・期末テストは余程の進学校でもないかぎり問題は基本的で、ほぼ丸暗記で点数が取れる問題になります。ですから、範囲の決まっているテストであれば力を発揮できるタイプの生徒さんが有利となります。