近年、全国的に宿題を廃止する学校が増えています。生徒の主体性・自立・自律を育むというのが目的になっているようです。最初は東京の一部の公立中学で始まった宿題廃止ですが、その中学は難関高校への進学者が激増したようです。理由は明白で、時間ができたので受験勉強をする時間が増えたということです。通塾率はもともと高いため変化はありませんが、通塾回数が増えたとのことです。しかしながら、成績下位層はさらに状況が悪くなったようで、成績下位層の生徒さんは宿題廃止を勉強をやらなくていいというメッセージとして受け取ったということでしょう。

また、コロナ禍における学校の休校があった年は、全国の難関大学合格実績で公立高校が躍進したということもありました。東大合格者における公立高校生の占める割合が例年より高くなりました。このことのみで判断すれば、公立中学・高校の授業がないほど生徒の学力が向上することになってしまいます。それは極論だとしても、時間ができた分を受験勉強に費やしたのは事実です。

私は以前、偏差値60程度の中堅レベルの公立高校の先生に「進学実績を上げるにはどうしたらいいでしょうか。」と質問されたので「宿題を廃止すれば間違いなく進学実績が向上しますよ。」と言ったところ、かなりお叱りを受けることもありました。しかし、偏差値60程度のある程度意識の高い生徒が集まる高校であれば、宿題廃止すればほぼ間違いなく進学実績は向上すると思われます。塾・予備校に通う生徒も増えると思います。

近隣の高校では尼崎○○高校が宿題を廃止し、定員割れが続いていた尼崎○○高校の志願者数を激増させました。志願者が増えることは容易に想像できますし、他校の状況から進学実績も向上することは予想できたからです。

しかしながら、尼崎○○高校はサイエンスリサーチ科と国際探究科、看護医療類型、普通科がありますが、サイエンスリサーチ以外は、中位レベルの高校です。おそらくサイエンスリサーチの生徒は学校の勉強はそれほどしなくていいということで、塾・予備校に通って勉強する生徒が多くなるでしょうが、その他のコースの生徒は宿題廃止を勉強しなくてよいと考えて勉強しなくなることも考えられます。

つまり、宿題廃止は上位の生徒には非常に効果があがるものの、その他の生徒にとってはどう転ぶかわからず非常に危険と言えます。宿題がないということは、上位の生徒にとっても、それ以外の生徒にとっても非常に魅力的ですが、中身と理由は全く異なります。